なぜ日本語の乱れを指摘する人は後を絶たないのか

なぜ日本語の乱れを指摘する人は後を絶たないのか

日本語の乱れを指摘する人は後を絶たない。

取り分け、避難の的になるのは若者である。

若者言葉」というのは、何も若者が使う言葉というニュアンスだけでなく、今までの日本語とは違った言葉という皮肉の意味合いも込められている。

では何故、日本語の乱れを指摘する人は後を絶たないのだろうか?

純粋に誤った日本語が広まるのを防ぐために指摘しているのだろうか。

いや、そうではない。

日本語の乱れを指摘する人は、一種の阻害感から日本語の乱れを指摘しているのだと私は考える。

社会言語学に、「集団語」という言葉がある。

集団語とは、同じ言語であっても、特定の社会集団、あるいは特定の専門分野でしか使われてない言葉である。

例えば、医療従事者なら医学の専門用語はすぐに通じるだろうが、医学に暗い人には何を言っているかちんぷんかんぷんだろう。

またネットを使ったこともないような高齢者の方が、ネットスラングを聞いたとしてもそれが何を指しているのかは分からないはずである。

ここでいう医学の専門用語やネットスラングが、いわゆる集団語なのである。

ちなみに、集団語は大きく分けて以下の2つに分けられる。

その2つというのが、上の図のように生業語・職場語・専門語・術語のグループと隠語・スラングのグループである。

この2つのグループについて、『改訂版 日本語要説』では以下のように書かれている。

「生業語」から「術語」までは、いずれも職業や専門分野での仕事の必要上、あるいはその効率的な運用という機能のもとに生まれた(造られた)ことばである。一方、「隠語」「スラング」は、集団内での秘密保持や心理的結合を強化する機能を持つものとして造られたことばである。

『改訂版 日本語要説』ひつじ書房 P.211より引用

ポイントとなるのは、「隠語」「スラング」のグループである

この「隠語」「スラング」の言葉の性質は、集団内での秘密保持や心理的結合を強化である。

これを言い換えると、自分たちのグループ以外を排除して、グループ内(共同体)の結束の強化のために「隠語」や「スラング」は作られるのである

では「若者言葉」は、集団語においてどのグループに属しているだろうか。

そう、「隠語」「スラング」のグループである。では排除されるグループは一体どんな層なのだろうか。

壮年の方や年配の方である。

そして、日本語の乱れを指摘している人が一番多い層もこの年代である。

つまり、日本語の乱れを指摘しているのは、若者グループ(共同体)からのけものにされた 一種の阻害感から日本語の乱れを指摘しているのである

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