論語読みの論語知らずになるな。『学問のすすめ』
福沢諭吉と言えば、一万円札の肖像画になっている人物であり(2024年から渋沢栄一になる)、慶應義塾大学の創設者でもある人物だ。
今回はその福沢諭吉の代表的な著書であり、明治期のベストセラーでもあった『学問のすすめ』を紹介したい。
この『学問のすすめ』、主題を一言で言うなれば「論語読みの論語知らずになるな」である。
論語読みの論語知らずとは、『論語』をしたり顔で語ることはできても、その教えを実践できていない者の愚かしさから、書物を読んでも表面的に理解するだけで真髄をわかっていない人をあざけっていうことわざである。
つまり、論語を読んでいても、論語の教えを実践できない人にはなるなと言うのがこの本の主題なのだ。
福沢自身、著書のタイトルにも表す通り、学問をすすめている。
『実語教』(江戸時代に寺子屋で使った教科書)という本に、「人、学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあるように、賢い人と愚かなる人との差は、学問をしたかしないか、によって決まるのである。
『学問のすすめ』福沢諭吉(著)岬龍一郎(訳・解説)
しかし、更に読み進めていくと、学問を学び、そのことを実際に行動に起こさないと意味がないと福沢は述べている。知行合一ということですな。
そもそも人間の勇気は、書物のみから得られるものではない。読書はあくまで学問の道具であり、学問は事を成就するための手段である。実行し経験を積んでこそ、本当の勇気は生まれるのである。
学問を積んだ者は、貧苦に耐え、艱難を克服して、得た知識を文明の発展に貢献すべきだ。その道はどのような分野の学問でもいい。商業をすすめ、法律を論じ、工業を起こし、農業を改革し、著作・翻訳を著し、新聞を発行し、文明に関するすべての事柄を、自分の役割と任じ、国民の先頭に立って、政府に協力すべきである。
『学問のすすめ』福沢諭吉(著)岬龍一郎(訳・解説)
長い引用だが、この本の中で私が好きな箇所でもある。
この引用の雰囲気からも分かるように、福沢はなかなかの商売・実業右翼である。
早い話、実学を学び、学んだことを実際に自分で商品にして作ってみて売る。このことを福沢は説いているのですな。
このスタンス、嫌いじゃない(笑)
最も、『学問のすすめ』が書かれたのは明治期だ。
植民地政策のもと、欧米列強の脅威に晒され、富国強兵を急いでいた当時の日本と富を生む源泉が人間の頭脳となった21世紀の日本では状況が大分違うだろう。
それでも尚、何のために学び、学んだことをどう生かすのかが書かれているこの著書は今なお学びがある一冊だ。
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