石油時代の終わりとr>gの限界

r>gの再解釈――エネショート時代における富の正体――

r>gとは何か

r>g。
投資の世界ではあまりにも有名な不等式である。

これは経済学者トマ・ピケティ氏が提示した概念であり、
r は資本収益率、g は経済成長率を表す。

この式が意味するのは、

資産(資本)によって得られる富は、
労働によって得られる富よりも速く成長する

という主張である。

そのため r>g は、
「株や不動産などの資産に投資すべきだ」
という文脈で引用されることが多い。

しかし、ここで一度立ち止まって考えたい。

r は本来、g と等しくあるべきではないのか。


ピケティのデータが示す「時代性」

ピケティ氏が参照したデータは、主に18世紀以降、
およそ200〜300年にわたるものである。

この期間は何を特徴としていたか。

  • 石炭
  • 石油
  • 高いEROI(エネルギー投資効率)

すなわち、豊富な自然エネルギーを前提とした経済成長期である。

r>g は、この特異なエネルギー環境のもとで成立していた
歴史的条件付きの法則」だったとも言える。


2020年代は同じ世界ではない

しかし、2020年代以降は状況が明確に異なる
正確に言えば、その転換点は2008年のリーマンショックにあったのだが、この話はまた別の機会に話すとしよう。

  • 石油の減耗
  • EROIの低下
  • 労働人口の減少

現在はこれらが同時進行で進み、
g(経済成長率)は構造的に低下し始めている。

ここで改めて g の正体を確認する必要がある。


gとは何か

g とは、
労働によって生み出された財・サービスの総体である。

より正確に言えば、

人間の労働力 × 自然エネルギー
その変換結果

が g である。

そして現在、その両方が縮小している。

  • 使えるエネルギーは減り
  • 働ける人も減っている

この状況下で、g が増え続けると考える方が不自然だ


rの正体 ― 富ではなく「請求権」

ここで決定的に重要な点がある。

株や不動産が生み出す r は、富そのものではない。

r が生み出しているのは、

労働によって生まれた財・サービスへの「請求権」

にすぎない。

だからこそ、

  • 労働が止まれば r はゼロになる
  • エネルギーが細れば r は消滅する
  • 保守できなければ資産は負債化する

という運命を免れない。

ボトルネックは常に g にあるのだ。


エネショート時代に起きること

現代は、石油を代表とする自然エネルギーが縮小していく
エネショートの時代である。

このような時代には、必ず次の現象が起きる。

それは、富の定義の再物理化だ。

株やマネーのような抽象的な数字ではなく、作れるか、直せるか、維持できるかが価値の中心に戻っていく。


結論

富は労働によってのみ生まれる。
株や不動産は、労働の成果を配分する仕組みにすぎない。
そしてその配分装置は、エネルギー制約下では必ず縮む。

r>g は永遠の法則ではない。
それは高EROI時代にのみ成立した、歴史的現象である。

エネショート時代において問われるのは、
r をいかに増やすかではなく、

g をいかに現実に確保するかなのだ。

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